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桜子流お客道指南

【はじめに】


  私はずっと「お客」という立場で生きてきました。と言うと、お前は一体何者だ? とつっこまれそうですが、誰だって「お客」の立場を経験したことのない人はいませんよネ。ちょっとした買い物をすれば必ずあなたはお店にとって「お客」です。

 私もふつうの意味で「お客」の経験をいっぱいしてきたわけですが、料亭やレストランに行ったり、洋服や着物やいろいろな買い物したりすることが、私の場合は子供の頃から特別な意味をもっていたように思っています。今年42歳の私の人生のいろいろなシーンにおいて、いや、人生のかなり重要な部分で、私は「お客」という立場で物事を感じ、考え、評価してきました。「お客」であるということを強烈に意識して生きてきたと言っても過言ではありません。

 これは私の生い立ち、育った環境とも関係があると思いますが、それはおいおいお話するとして、友達も昔から「桜子はどうして特別待遇になるのよ」とよく言われてきました。私自身は特別なことをしているつもりはなかったのですが、確かにふつうの人が10回そのお店に通ってやっとやってもらえるようなことを、一度行っただけでやらせてしまうというようなことは多々ありました。

 そんな経験をいろいろして、また周囲からも言われて改めて考えてみたのですが、今の時代、多くの人が「お客」でお店に行っているのにその「お客」であるという自分の立場を意識しなさ過ぎるのではないかと思います。自分のことを「お客」と思っていなければ、お店もあなたを「お客」扱いしなくなります。それどころか「お客」なのにお店におもねって、そのことで何とかお店から良く扱ってもらおうなどというさもしい考えの「お客」もよく見かけます。

 そんなことをしているから、「お客」とお店の関係がぐちゃぐちゃになって、どっちが「お客」なんだかわからない変な現象が起きるのです。「お客」がしっかり「お客」をしていないから、お店もダメになるし、サービスというものがわけのわからないものになってしまうのだと思います。今の日本にはそんな「お客」とお店があふれかえっています。

 というわけで、私なりに「お客」の正しい道を、このコラムで追求していきたいと思います。「桜子流お客道」家元(大げさだけどネ)という立場で、偉そうに指南させていただきますわ(笑)。

第一回目【あなたが担当、お願いネ!】


 誰だって「お客」としてお店から特別に扱われたいと思っています。女は特にそう。そのためにいっぱいお金を遣う人もいます。お店におもねって良くしてもらおうという人もいます。反対に居丈高になって偉そうに振る舞う人もいます。

 私からすると、これらはすべて邪道です。こういう人達は、良くしてもらうためにお店に自分を印象付けようとしているわけですが、その前に、なぜそのお店に行くのかをよく考えてみましょう。レストランであれブランド店であれ、そこが素晴らしいお料理を出すから、質のいい品物を置いているから、だと思います。そのお店の一番いいところを享受するために行くのでしょう。

 ここで肝心なことは、必ずあなたの相手をするお店の人がいるということです。料亭だったら仲居さん、フレンチレストランだったらソムリエやメートル・ド・テル、ブランド店だったら販売スタッフ。お店の一番いいところを享受するためには、直接相手をしてくれるこうしたスタッフに恵まれなければ絶対に目的は達成できません。

 私の場合は、そのお店で一番能力のあるスタッフが私に付くんです。私はそう信じてお店に行きます。このことが大事なんです。いいスタッフが担当として私に付かなかったら、そのお店は私にとって長続きしません。ダメなスタッフが係で付いた時は、結局そのお店は私のお店にならないのです。

 だからもしダメなスタッフだと感じたら、最初にすぐ「担当変わって! 他の人に変わって」と言います。とっても言いにくいことですが、心を鬼にして、最初に行ったときにそれをやらなければダメなんです。後になってからではもっと言いにくくなり、結局、担当がダメだからということでそのお店に行かなくなってしまいます。

 買い物の場合、買う物それ自体は変わらないんだから、係が誰であれ関係ないんじゃない? というのは間違いです。係のやる気次第で、洋服の直しも早くなるし、買った物の包み方だって変わります。少しでも良くやってくれたら私だって嬉しくなって、またそのお店に行きたくなるじゃないですか。

 だから私は、初めて行ったお店で最初に係で付いたスタッフが良ければ、必ずこう言うことにしています。「あなた、私の担当してね」って。

 私の担当者として指名するわけです。「偉そー」と思ってはダメ。だって担当に指名されたスタッフは、そう言われたことで、私のことをはっきり意識することになります。場合によっては、とっても嬉しく思ってくれるかもしれません。少なくとも、私のことを自分の「お客」として意識し、私のことを一生懸命やってくれる可能性がうんと高くなります。

 お店のスタッフのやる気を引き出すためにも、「あなたが担当、お願いネ!」が重要なのです。

 

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