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素晴らしいレストランとお料理は、お客がその時空間の中で味わって、初めて完結するもののはずです。
ですからこの本は、料理を料理としてただ紹介するものではありません。
アール・デコの館「ミュージアム1999」内にある高級フレンチレストラン、ロアラブッシュを舞台に、天才料理人、中嶋寿幸シェフが季節を取り込み工夫を凝らして調理した素晴らしい12ヶ月の料理と、その料理に合うワインを創造的に選ぶ矢内徹ソムリエ、そしてお客の立場から、その料理とワインを味わい楽しみ、かつ問題提議もするという私、星野桜子とによる、三者の立場からフレンチとワインのマリアージュの世界を紹介しようという本です。
この本の企画意図を、『レディへの晩餐』編集長の宮本和英さんの文章でご紹介します。
「世の中、料理やレストランを紹介する雑誌や本が溢れるほど出版されています。そういう中で本書を企画したのは、お店を紹介する、料理を紹介するだけでは、大事なものが欠けていると思ったからです。
どんなに素敵なインテリアのお店であれ、どんなに手の込んだ料理であれ、それを写真やデータで紹介するだけでは、読者にとって実は不完全なのではないか、レストランで食事をするということは、あくまでもお客の視点があって、お客が食事をしてみて実際にどうだったのか、そこまで紹介して初めて完結するのではないか、そう考えたのです。しかも一つのレストラン、なるいは一人のシェフの料理を知るには、食材や季節のことを考えると、やはり一年間は追いかけなければ本当のところはわからないと思うのです。それだって十分とは言えないかもしれません。
しかしながら実際にそれを行なうとなると、現実問題として、なかなか困難です。この問題をクリアさせてくれたのは、ひとえにロアラブッシュの中嶋シェフとスタッフの皆さん、そしてロアラブッシュのお客である星野桜子さんの存在でした。中嶋シェフはフレンチの世界でも知る人ぞ知る達人です。そして星野さんは、大のフレンチ、ワイン好きで、自身料理の腕前はセミプロ級、かなり特別な味覚(何度もびっくりさせられました)に恵まれた人です。ソムリエの矢内さんと彼女のロアラブッシュでのテーブルトークは、料理、ワイン、サービスについて繰り広げられ、彼女の時に辛辣、言いにくいこともしっかり伝える姿勢は、まさにお客のプロフェッショナルです。贅沢な時間を過ごすために、ディナーの日は最大限オシャレをして来店するという彼女の姿勢も、お客の在り方を考えさせてくれるものでした。
こうした人たちに出会って、ひょっとしたら、レストランの世界を今までとは一味違う形で紹介できる本が作れるかもしれないと思ったのです。
中嶋シェフの工夫を凝らした料理、ワインのセレクションに創造性を発揮してくれる矢内ソムリエ、そしてそれを食し、贅沢なフレンチの世界を語るお客の星野さん。この人たちの一年間のドキュメントによって、ただ料理やお店を紹介するというだけではないところまで踏み込めるのではないかと思ったのです。相当に手間隙をかけた取材でしたが、もちろんこれで充分とは思っていません。高級フレンチレストランの世界の、一つの紹介の仕方として、実験してみたかったというのが本音です。あれも足りない、これも足りないというご指摘がきっとあると思いますが、フランス料理とワインについて、いろいろなレベルの読者の方々に、何かヒントになることがあればと願っています。」
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