星野桜子.com

 着物をお誂えするのは、私にとって一番楽しい贅沢なことです。「きもの万華鏡」の表紙に使ったカメリア柄の着物は、私にとってまさにお誂えの醍醐味でした。シャネルがずっと好きで、もしシャネルに着物があったらこんな感じよって、ずっとずっと考えていた着物のイメージを、デザインから関わって作っていったんですから、その間の楽しさといったらありませんでした。詳しくはぜひ「きもの万華鏡」を見て下さい。
 でも、着物を一からお誂えしていくというのはもっとも贅沢なことだとしても、実はお誂えというのは、生活のいたるところにあると思っています。

 たとえばお食事。レストランに予約するとき、私は料理をお誂えする気持ちでメニューの相談をします。自分のものを何か買い物するときも、どなたかへのプレゼントを注文するときでも、少しでもいいものにしたいという気持ちが大事。そうです、少しでも自分の思っているものに近づけたい、そのためにお店の担当の方にいろいろと相談に乗ってもらい、注文をする、これがお誂えの基本だと思います。そしてそういうお客の注文にきちんと応えてくれる、応えられるお店が素晴らしいのだと思います。そういうお店やお店の担当者を見極めたいですね。

第一回「和光でハンカチーフをオーダーしました。」

 銀座の和光で名前入りのハンカチーフをオーダーしました。これはお世話になった方へのお礼に遣おうと思って、その方たちのお名前を刺繍してお贈りするつもり。お揃いにしたいので私のものもオーダーしました。店頭に出ていないものまでいろいろ出していただいて、綿と麻から白地のスイスレースを施したものを三種類選び、三枚セットにしました。

ハンカチ2

ハンカチ3

ハンカチ1

 まず名前の刺繍を何色にするか。
 最初お店側は、一番ゴージャスなレースのハンカチーフには「レースがゴージャスなので名前は薄い色をお勧めしています。反対に控えめなレースには濃い色をお勧めしています」と言うのです。私は「えっ、どうして?」と思ったの。どうして魅力をすべて半減させてしまうの? 
 桜子流で言えば、「ゴージャスなレースには名前もゴージャスな色で」が鉄則。だいたいゴージャスなハンカチーフは持っていく場所だって華やかなはずですもの。だから私は、一番ゴージャスなレースのものにはゴールドの名前を刺繍し、ちょっとシャープなレースのものにパープル色を、清楚なレースのものに薄いピンク色で名前を刺繍してもらうことにしました。一番控えめなレースは、持っていく場所だって控えめなところなので、名前も控えめにして薄いピンク色でって。そういう考えを述べたところ、担当の山田さんも「ああ、なるほど。そうですよね、華やかなものは持っていく場所も華やかなところですものね」って。
 ハンカチーフ一枚でも出掛ける場所で選ぶべきでしょ? ということで、和光のハンカチーフ売り場では「今後、そのようにお勧めすることにしました」ですって。それから見本のアルファベットの大文字のSが、あまり気に入るものではなかったので、少し調節してもらったところ、これも今後は「大文字のSは桜子さんの指定の形がすごく綺麗に仕上がったので、これでいくことにしました」って言われちゃったの。担当の山田さんからそう言っていただいたのも、とってもウレシイ!
 後日、出来上がったハンカチーフを見て、さすがに和光さんは職人さんの腕がとっても素晴らしいと思いました。
 名前入りのハンカチーフは、どこかに忘れてきてしまったときでも、その場所に持ち主の余韻が残ります。昔、ディオールのお店の控室にハンカチーフを忘れたことがあって、ウェッジウッドのレース遣いのお気に入りのハンカチーフでしたが、名前が入っていたわけではありませんでした。でも後日、お店に行ったとき、担当の人から「ひょっとしてこれは桜子さんのですか?」と言われたことがありました。「素敵なハンカチなので、きっと桜子さんのではないかと」と言われて、ハンカチーフ一枚でも女性の身だしなみや美意識が見えるものなのだと思ったことがあります。
 和光の山田さんにもその話をしたの。忘れてきてしまったときでも、名前入りのハンカチーフだったら、何か素敵でしょって。私の余韻がその場所に残っているっていうことだし。だからってわざと忘れなくてよ。
 その後、この名前入りのハンカチーフは、プレゼントした方にもとっても喜ばれました。プレゼントって包みを開けたときの「わぁっ」っていう気分が大事。それからプレゼントしてくれた人がどれだけそこに手間隙をかけてくれたのかが伝わることもとっても大事です。そういう意味で、ハンカチーフのオーダーは大成功でした。
 日本ではハンカチーフはお別れの印といわれていたようですが、今はそう考える人はいないし、ヨーロッパではその人のお守りになるという意味で、名前入りのハンカチーフはとても大切なプレゼントとして扱われているそうです。
 名前入りのハンカチーフって、持っていたら素敵だなって思いますが、自分ではなかなかそこまで注文しにくいものです。だからこそ、とっても喜んでいただけるプレゼントになると思います。ちなみに三枚で名前入り刺繍を施して約2万円でした。
 私自身、今後、何かいいことがあったとき、一枚ずつ名前入りのハンカチーフを作っていこうかなと思っています。もちろん、白のゴージャスなレースで!
 あっ、絶対レースのものがお勧めよ。だって、掌に持ったときに少しレースがこぼれて見えるのが、とってもエレガントですもの。

 和光の山田さん、いろいろよくしていただいて、本当にありがとうございます!

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